Release Date: Sep 11, 2015
東京の新しい「コーヒーの街」− 清澄白河
僕の妻は以前、清澄白河駅のすぐ側の建築事務所で働いていた。その間の何年間かは、2〜3ヶ月に1度「あ、そういえば、近くに新しいコーヒー屋さんがオープンしたの知ってる?」なんていうメールを送ってきたものだ。僕はその度に「また!?」って感じだったけどね。
清澄白河は、またたく間に「コーヒーの街」と呼ばれるようになった。こんな風に日本一刺激的なカフェの集結地点になったのには、理由があるはずだ。他よりも土地が安価だったことがその理由だと言う人もいれば、貯木場として使われていた、天井の高い工場群が焙煎所にぴったりだったからだという人もいる。または、たくさんの美術館やギャラリーが、清澄白河にある種の「スローライフ」の風を吹かせているからだという意見もある。
その理由や経緯ははっきりとは分からないものの、この土地にコーヒーが「漂っている」ことは確かだ。
それでは今から、清澄白河ではじめに行くべき5つのカフェを巡ることにしよう。もちろんこのコーヒーツアーの途中にも、まだまだ色んなカフェがあるんだけどね!
MONZ CAFE
門前仲町は現代的でありつつ、伝統的な寺社が集まる区域であり、その周りにはお茶や和菓子の店もたくさんある。MONZ CAFEのオーナーは建築家だそうで、近くにある「All Press Espresso東京ロースタリー&カフェ」のデザインも手掛けたと聞いても納得がいく。
メニューにはフラットホワイトやロングブラックもあるので、ニュージーランドやオーストラリア出身のお客さんにもしっくりくることだろう。日本でちゃんとしたフラットホワイトを出せるカフェはなかなか無いのだ。
居心地も良いので、2〜3時間は優に過ごせる。読み終えたい本を持ち込んでもいいし、メールチェックをしても、ラブレターを書くのにもいいかもしれない。
店舗情報
東京都江東区富岡1-14-5
http://www.monzcafe.com
江戸深川珈琲本舗
何かに深いこだわりを持つというのは、大切なことだ。オーナーの山岡さんにとってのこだわりは、もちろんコーヒーと、そして刀の収集だ。彼はコーヒー業界に45年間携わっており、店で取り扱うコーヒー豆は45ヶ国以上から集めているという。それだけではなく、山岡さんはコーヒーカップの収集家でもある。50万円もするという、緑色の龍があしらわれたイギリスのカップを見せてもらったのだが、皆でうっとりしてしまった。
山岡さんによると、「美味しいコーヒー」と分類できるようなコーヒーは無いのだという。それぞれの舌に合ったコーヒーが、それぞれにとっての「美味しい」なのだ。今まで聞いたことも、味わったこともないコーヒーの世界を知りたければ、山岡さんが喜んで案内してくれるはずだ。あなたに合うコーヒーを一緒に探してくれるだろう。
次のお客さんが来るまでの間、山岡さんは刀を研いだり、拭ったりしていた。東京の蒸し暑い夏の間には、なおさら必要である。Goodcoffeeの取材班が気づいたことは1つ、もしもこの店に強盗が入るようなことがあれば、すぐに刀で頭を切り落とされておしまいだということだ。
店舗情報
東京都江東区冬木6-18
Blue Bottle Coffee 清澄白河ロースタリー&カフェ
カフェからギャラリーへ、そしてまたカフェへと巡っていると、ブルーボトルコーヒーのカップや紙袋を持っている人たちを何度も見かけるだろう。
もしかすると、日本の中でも1番画期的な建物かもしれない。大きなガラスのドアと高さのある天井の組み合わせが、この2階建ての建物を特徴付けている。お客さんがコーヒーを飲むためのスペースは決して広くはないのだが、店内で色々なことが巻き起こっているのを感じることができる。バックヤードでは焙煎とコーヒーの物流が行われているし、2階にはオフィスと一緒にトレーニングとカッピングのスペースが設けられているそうだ。
ブルーボトルがコーヒー市場を一変させたのだという人もいる。もちろん、1つの巨大なビジネスであることは間違いない。しかしそれと同時に、スタッフのほとんどは店が静かな時間には楽しくおしゃべりをして、とても気軽な姿勢で仕事をしているのだ。
店舗情報
http://goodcoffee.me/coffeeshop/blue-bottle-coffee-tokyo-cafe-roastery/
PORTMANS CAFE
「ここが家だったらいいのに」、「ここに住みたい」、「こんなのどこで見つけてきたんだろう?」…僕たちは、PORTMANS CAFEに完全に心奪われてしまった。
ヴィンテージ博物館でコーヒーを飲むような感じだ。アメリカの野球やパイロット、消防士の道具など、数え切れないほどのヴィンテージアイテムに囲まれている。ジョン・レノンの像とジュークボックスも素敵だった。
コーヒーのために訪れたものの、ランチもいただくことにした。そして、僕たちはとても感動したのだ。3人の若い女性がカウンターの後ろで料理を作り、コーヒーを淹れる様子には、『かもめ食堂』を観た時と同じ気持ちを抱いたからだ。ジャンルは違えど、同じ暖かさを感じたのだった。
店舗情報
東京都江東区清澄2-9-14 ダイアパレス清澄公園 101
http://portmans.jp
ARISE COFFEE ROASTERS
僕がARISEに訪れた3回とも、ブルーボトルのバリスタがコーヒーを飲んでいるところに出くわした。この店は、そういう場所なのだ。
オーナーの林大樹さんは若いけれど熟練のマイクロロースターであり、この土地を尊重し、とけ込んでいる。彼は街角のロースタリー兼カフェ、ARISE COFFEE ROASTERSを自分でオープンする前、The Cream of the Crop Coffeeで何年も働いていた。ここのコーヒーの味は一流なのだ。
オープンしてからというもの、ARISEは清澄白河エリアのコーヒーの中心地のような役割を果たしている。最初の休憩地点としても完ぺきな場所だ。ブルーボトルからたった50mほど下ったところにあるにも関わらず、いつも人でいっぱいなのだ。これはたぶん、大樹さんのフレンドリーで暖かい人柄も影響しているんじゃないかと思う。この街で今何が起こっているのか、とても楽しそうに話してくれる(コーヒー以外のこともね!)。それに、店で一緒になったお客さん同士を繋げてもくれるのだ。全ての面において、気取らないこと。これが本当のカフェのあり方だと思う!
店舗情報
http://goodcoffee.me/coffeeshop/arise-coffee-roasters/
-by Vaughan
Photography by Nik van der Giesen
Translation by Aoi Nameraishi