SPECIAL INTERVIEW presented by RITUAL × GLITCH

SPECIAL INTERVIEW presented by RITUAL × GLITCH

SPECIAL INTERVIEW presented by RITUAL × GLITCH

Release Date: Oct 13, 2016

サンフランシスコを拠点に10年程前から浅煎りコーヒーの美味しさを広めるリチュアルコーヒーロースターズ(RITUAL COFFEE ROASETRS)のオーナー、アイリーン氏(Eileen Hassi Rinaldi)が先日初来日されました!

そこで今回、日本を代表する浅煎りコーヒーの名店グリッチコーヒー&ロースターズ(GLITCH COFFEE & ROASTERS)のオーナーである鈴木清和氏とのスペシャル対談インタビューが実現されましたのでご紹介させていただきます!!

 

ロースターとして焙煎で一番気をつけていることは?

Eileen (以下E): データの蓄積と感性のバランスが一番大切だと思います。
焙煎というのは、科学的なアプローチと感性を融合させながら行うもので、どちらかに100%偏ってはいいものが出来ないからです。よりよい焙煎を行うために細かいデータを取りながら、工程の一つを少しだけ変更させながら結果を検証していく作業は、化学実験にとても似ています。ただ、その作業をしている時に閃きが起こる時があるんです。全く違うアプローチのほうがいい結果になるんじゃないか、と。その時は直感を信じてデータを無視してやってみると、すごくいい結果になったりします。その閃きも検証作業を積み重ねた上で起こるものなので、直感のほうがデータより重視すべきということでもなく、常にデータと感性がうまく融合するようなバランスに気をつけています。

Kiyokazu (以下K):  カッピングとブリューの焙煎は変わるの?

E: カッピング、バッチブリュー(コーヒーメーカー)、ハンドドリップ全部が美味しいコーヒーになるようにしています。カッピングしてみて美味しく出来ても、バッチブリュー、ハンドドリップで上手く味が作れないようであれば、そのロットは廃棄してしまいます。お客様は、焙煎した豆をバッチブリューかハンドドリップで飲むので、カッピングだけで判断することはしません。

K: 考えていることは一緒で、バッチブリューもカッピングも全部が美味しいコーヒーということ(エスプレッソ以外)を重要視しています。一番大切にしていることは、産地個性ですね。やはり焙煎も一緒ですが、毎回テイスティングをして、一週間という期間を決めて、その中で自分の良くないと思ったポイントを考え、次の週の焙煎プロセスに少し変化を加えます。パソコンでデータをとっているので、同じことをすれば前回と同じプロセスでやることも可能です。『一番美味しいのは、今週の焙煎である(前回よりも今週の焙煎の方が美味しい)』というものをずっと作り続けています。

 

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E: エスプレッソとフィルターで焙煎を変えていますか?

K: 変えています。ローストがスローで火を弱く煎れています。

E: フィルター用よりもダークローストになるようなプロファイルにしてますか?

K: 抽出の秒数が違うので、フィルター用で落としてしまうと味が出ません。ダークローストと言うよりも、見た目ではわからないと思いますが、火の入れ方が全然違います。あとは時間が長いですね。

E: だいたい同じですね。

 

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お互いの豆をカッピングしてみての印象は?

K: バランスとフレーバーがいいですね。

E: 種類も幅があっていいですね。私たち(RITUAL)の豆は、アメリカだとだいたい他のコーヒー屋さんよりすごくライトローストです。でも今カッピングをしてみて、私たちの豆よりももしかしたら(GLITCHの豆の方が)ライトローストかもと思ったのは、すごく新しい経験でかなり衝撃的でした。ライトローストが好きなので、今日はすごくよかったです。

 

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自分にとって美味しいコーヒーの条件とは?

E: すごく狭いポイントなんです。クリーン、スイート、明るい酸味とフレーバー。すべてのコーヒーにおいてそこの狭いポイントを狙っていて、種類が違ってもだいたい狙っているポイントは一緒です。明るさというのを大事にしているのは、産地個性が出やすいので、そこは外さないようにしています。

K: 産地個性とわかりやすさが大切ですね。例えばレモングラスのようなフレーバーのコーヒーをお客様に提供する際に、お客様にもそう感じてもらえること。エチオピアナチュラルだったら、ストロベリーのように。お客様にわかりやすいことが大事だと考えています。
色々なコーヒー屋さんがあるけど、わかりづらい。ダークローストにしてしまうともっとわかりづらいし、やはりクリーンカップであることが大切です。お客様に伝わりやすいコーヒーを選ぶことをずっと重点に置いています。

 

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E: 生豆を買うときに、これは買いたい、これは買いたくないというポイントは、何か決まったことがありますか?

K: オフフレーバーがないということですね。カビていたりとか、古い味がしたりとか。欠点豆の味がするものは買いません。あとは産地の個性味がきちんと出ているかですかね。

 

スタッフトレーニングで一番重点を置いていることは?

K: 何店舗あって、スタッフは何人いるんですか?何年やってるんですか?

E: サンフランシスコに4店舗、ナパに1店舗あって、スタッフは75人程です。11年やっています。
まずコーヒーが好きな人。トレーニングをする前に、採用があるのですが、その採用をする際にまずコーヒーが好きであることを確認します。よくRITUALで働きたいという人が来ます。すでに10年くらいコーヒーの仕事をした経験があってなんでもできます!という人が来ることもありますが、そういう人はまず採りません。逆に10年の経験はありますが、もっとコーヒーのことをRITUALで学びたい、勉強したい人を採ります。コーヒーには終わりがなくて、変化し続けるものなので、勉強し続けなければいけないとわかっている人を採りたいと考えています。

K:トレーニングは、トレーニング指導者がいるんですか?コーヒーがめっちゃ好きな人がトレーナーをやっているのか、トレーニングが上手な人がトレーナーをやっているんですか?

E: すごくラッキーなことにどちらも持ち合わせている人です。2つの才能を持っています。人に教える才能があって、人と一緒に働くことに関してもすごく才能がある。そもそもコーヒーが大好きだから、新しいエスプレッソマシーンや器具が来れば、真っ先に試して、抽出方法を考えて下に落とし込んだり、バリスタとしてお客様との接し方なども教えています。

K: スーパーマンですね。そういう人が欲しいです(笑)
全部をトレーニングしないといけない。コーヒーを美味しく出せる人はいっぱいいますが、それを伝えられる人は少ない…コーヒー屋さんはすごく難しいと思います。普通のキッチンとか、レストランは、厨房は厨房しかやらないですが、コーヒースタンドは、コーヒーを提供しながら、それを説明しながら、サービスしながら、全部のことができるスタッフじゃないと難しい。一人一人厳しいですよね。一人一人がプロにならないと難しいです。

 

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E: ここ(GLITCH)で働きたい人、雇ってもいいっていう人を見つけるのって難しいですか?

K: 募集すれば簡単です。でも採りたい人(どのくらいのポテンシャルがあるか)を面接だけで見つけるのは難しいです。一緒に働いてみないとわからないですね。

E: 彼(その日働いていたGLITCHのスタッフを見て)はここでどのくらい働いているんですか?

K: 彼はオープン当初からです。全員でまだ8人しかいないけど、まだ誰も辞めてないよ!ブーブー言われて辞めたいっていう人はいるけど(笑)

E: 今雇っているスタッフの平均年齢は何歳ですか?

K: 26歳ですね。何歳くらいですか?

E: 20歳くらいです。サンフランシスコは時代とともに変わっていて、昔は家賃もそんなに高くなかったので、バリスタになりたくてサンフランシスコに来て、アパートを見つけて、お店でバリスタとして働くこともできました。でも今は給料の高いITの人が増えてきていて、その人たち向けに家賃もすごく上がってしまっていて、バリスタの人たちは払えなくなってしまいました。他の州からサンフランシスコにきて、バリスタになりたいというのは難しく、それが今問題になっています。

K: RITUALは今後の店舗展開を考えていますか?

E: はい。11年で5店舗やっていて、あと10年で5店舗やれたらいいなと考えています。今は場所を探しています。

K:どういう場所にお店を開きたいんですか?商業施設の中、路面店、車で来れるようなところ、おしゃれな場所…

E: コミュニティーが作れる場所。住宅街がいいです。自分のフラッグシップショップが、住宅街でショッピングできるところも入り混じっている場所で、常連さん一見さんも入り混じっているので、すごく良い環境です。5番目に作った一番新しい店は、住宅街にあって、近くに公園があってすごく雰囲気がいいです。

K: どこのお店が好きですか?

E: 1番目の店です。住んでる人がいるところがいい。都市部でオフィス街はあまりよくないです。アーティストが住んでたりするところはいいですね。

K: なぜですか?お客さんの質が良いから?オフィス街でお客さんがバンバン入って来れば、お金になるじゃないですか?ブランドコンセプトなどはありますか?

E: そこで長く働きたい、という場所に店を構えたいんです。

K: でもそういうところに店舗を見つけるのって難しくないですか?ダウンタウンに店を構えれば、人が集まってきてくれるじゃないですか!でも郊外の人が住んでいるエリアで、人を集めるって難しいですよね?どうやって集めるんですか?

E: RITUALをやる前に、ダウンタウンでバリスタをしていた経験がありますが、そこで働いていた時、そこに来る人たちが、とにかく早くコーヒー淹れてくれればいいよ、みたいな感じだったので…そういう場所で働くのは嫌だなと。
実際ナパという場所(田舎なんですが)にオープンするということは、スタッフみんな賛成でした。でもFacebookの本社オフィスに出店してくれというオファーもあったんですが、ひたすらマシンのようにコーヒーをオフィスの中で提供するというのは、みんなやりたくないだろうなと思い、断りました。

K: すごいなー。そこらへんの見極め方が。

 

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かつての部下が独立することに関しては?

E: かつてのスタッフが独立することは、自分にとっては誇りです。
それに関しては、サンフランシスコで3人くらいいます。今でも何かとサポートしています。若いスタッフの子達は、ニュージェネレーションで、新しいコーヒー文化を作ろうとしているから、かつてのRITUALのスタッフが活躍してくれることは、嬉しいです。

K: でかいライバル店は出来たことはないですか?

E: 今のところサンフランシスコ、アメリカで言えば、コーヒーのマーケット自体が拡大しているから、取り合うようなことはありません。でも逆に言えば、スペシャルティコーヒーを飲む人が増えるから、それは良い状態です。

K: やっぱりスペシャルティコーヒーを飲む人は増えてるんですか?

E: YES!!!

K: へぇー日本とは違いますね。増えてはいるけど、同じ人たちが回っているだけだから。

E: 小さいコミュニティーの方が良いですよ。みんな知っていて仲良くやれる方が。10年前は、サンフランシスコのお店にお客様が来て、コミュニティーというのがありました。
お客様が豆を買いに来て、この豆ってどうやって淹れるの?っていうお客様ばかりだったけど、10年経った今は、お客様の方が知っている。コミュニティーと呼ぶには大きくなりすぎて、言い方を変えればメインストリームだなと。より大きなコミィニティが形成されたと思えば良いのかなと。

K: その中で、本当にコーヒーを知っている人って何パーセントくらいいるんですか?エチオピアナチュラルは、ストロベリーみたいな感じだとか、ファッションできてるんじゃなくてコーヒーを本当に知っているお客様はどのくらいいるんですか?

E: みんな好きだと思う。

K: カフェモカっていう人もいるでしょ?(笑)

E: 昔は、ピーツ(Peet’s Coffee & Tea) とかで飲んでいたけど、今はRITUALとかフォーバレル、サイトグラスに行くようになった。行かない時は、自分で買った豆を家で淹れたり…流行りで飲んでるわけではなく、変わってきていると思います。

K: 僕は仲良くやりたいと思いますかね。日本は、コマの取り合いみたいなところがありますし、いろんな情報が入ってきてしまうんです。お客さんを通して。そんなに市場も大きくないですし、チルドコーヒーもあるし、缶コーヒーもあるし、コンビニのコーヒーもあるから。本当にスペシャルティコーヒーにお金を出す人が少ないと思います。そこの取り合いになるし、がんばっているところもだいたい決まっています。コンビニのコーヒー180円から、スペシャルティコーヒー480円、そこから変化させるのは難しいです。

E: もし自分の店から歩いていける距離にオープンされたら、さすがに応援しないけどね。

K: 東京は狭くて、どこに行くにも歩いて行けちゃうので。渋谷、新宿、池袋に密集していますしね。

 

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RITUAL、GLITCHはそれぞれコーヒー業界の中でどんな役割の店でありたいか?

E: スペシャルティコーヒーマーケットの中で、RITUALは、品質の良さで知られていきたい。規模を大きくしてシェアを増やしていきたいのではなく、それによって品質が崩れてしまうことはしません。

K: 一緒ですね。

E: 今サンフランシスコは、かなり投資家が入ってきていて、色々なコーヒー屋さんが店舗展開をしています。でもRITUALは全て断っていて、投資を受け入れたところは1年に20店舗程出して大きくなったけれど、店はよくなくなってしまっています。そうやって大きくなりすぎてしまっている店もある中で、自分たちはコントロールできる中でやっているから、逆に今同じ土壌に立てていると思います。あとはコーヒーをやるなら、RITUALということで1番に知られています!

K: 素晴らしいですね。僕も広げたくはないんですよ。広げたらクオリティは、絶対に落ちるし、同じコーヒーが絶対にできない。GLITCHを広げることはないですね。ここ1店舗か多くても2、3店舗くらいかな。下のスタッフに独立させて、そこはそこでやってもらうようにしたいです。

E: チェーンって呼ばれるのって何店舗からなんですかね。
今RITUALは5店舗とロースターで、まだ自分で把握できています。誰がトラブル起こして、誰ができて、どうすればいいか…今は対処できる。でもそれが20店舗になったらできなくなる。

 

もし、コーヒーの世界に入っていなかったら、今頃なにをしていたか?

E: チーズかアイスクリームですね。
オーガニック食材を使ったローカルのアイスクリーム屋さんが流行りだした時期が、コーヒーが流行りだした時期とサンフランシスコは同じなんです。だから多分。アイスクリームやっていたら、結構成功していたと思います(笑)

K: 僕は完全、陶芸ですね。もう面白すぎるから。10年くらい前やっていました。

E: これからリタイヤした後にでも、個人で頑張っている人たちを応援したいなと考えています。

K: すごいね。やっぱり言うことが、成功者ですね。

 

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コーヒーが苦くて飲めない、または深煎りコーヒーが好きな人に向けてメッセージを

E: とにかく一回私達のコーヒーを飲んでみて欲しいですね。ミルクや砂糖なしで、ブラックで。
私の妹もコーヒーは好きではなくて、紅茶派だったんですが、私達が直接関わっているグアテマラの農園のコーヒーを飲んでもらったら、フルーティーで美味しいと言ってくれて、それからコーヒーを飲むようになったんです。どうしても苦手な人はカプチーノがお勧めです。もちろん、砂糖なしで。

K: 一番何が売れるんですか?RITUALで。

E: ラテです。あとバッチブリューですね。店ごとに異なりますが。

K:  一回試してくださいっていうだけですね。コーヒーは苦くないので。コーヒーには風味があるので、それを少しずつ理解してもらえるように。今の固定概念を変えてもらえるようにしたいですね。

E: 同じ戦いを違う場所でしていますね。

K: そうですね、大変ですけどね。どうやって新しい、フルーティーなコーヒーを広めているんですか?セミナー?カッピング?言葉?コミュニケーション?

E: 図書館などでワークショップを開催したり、科学ミュージアムでもやったりしています。そういうところでやる理由は、コーヒー好きではない人がいるから。でも続けてやることが大切です。TOKYO COFFEE FESTIVALはいいんだけど、コーヒー好きが多いので、伝えるということが、知っている人に焼き増しする感じになりますよね。

K: それを何回も繰り返しているの?

E: そうです。自由参加できるアートイベントにも出店して、無料でエスプレッソを提供したことで、多くの人に衝撃も与えました!

 

《INFORMATION》

2016年10月29日・30日の2日間、東京神保町にて開催される【COFFEE COLLECTION around KANDA NISHIKICHO 2016 AUTUMN】でもRITUALとGLITCH のコーヒー豆をご紹介いたします!

 

RITUAL COFFEE ROASTERS
https://www.ritualroasters.com/#home

GLITCH COFFEE & ROASTERS
http://glitchcoffee.com

 

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Photography by Shinji

 

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