“Coffee Road Trip” Part 3

“Coffee Road Trip” Part 3

“Coffee Road Trip” Part 3

Release Date: Sep 19, 2017

「自分でコーヒーショップを始めた15歳の少年の話、聞いたことある?」
「え、ちょっと待って。15歳?50歳?」
「1と5の15だよ。」
「いや、、、知らない、、、」
「どうやら彼は学校であまりうまくいってないみたいなんだけど、コーヒーでは成功しているみたいなんだよね。」
「そうなんだ、ぜひもっと詳しく知りたいな。」

この会話は、私たちが今までインタビュー記事の構成について話し合いをしてきた中で、一番短い話し合いでした。それだけ、今回のインタビューは即決で、すぐにアポイントメントを取ったのです。そして私たちは群馬県桐生市にあるHORIZON LABOを訪れました。Coffee Road Trip Part 3の始まりです。

2017年、暑い8月の日に私たちは岩野響さん(15歳のコーヒーロースター)と彼の父親である岩野開人(はるひと)さんのお話をHORIZON LABOで伺いました。

響さんとコーヒーのお話は、周りの人に比べてとても若い時に始まりました。と言っても、大昔のことではありません。ほんの数年前の話です。響さんがコーヒーを淹れ始めたのは、彼がまだ小学生の時。コーヒー好きのご両親のために、何度も淹れ方を練習し、今もなお響さんの淹れるコーヒーをご家族皆さんで飲まれています。

開人さんは息子さんのリクエストでフレンチプレスやいろいろなドリッパー、ミニサイズのエスプレッソマシーンなど、様々なコーヒーの抽出器具を買ったそうです。子供がカフェインを摂取することには抵抗があったものの、少しなら大丈夫かなと思われたそうです。

響さんは子供の頃、周りの子供たちとはちょっと違った子供だったと言います。テレビアニメを見ず、ナショナルジオグラフィックのドキュメンタリー番組を見たり。学校では黒板の文字をノートに正しく板書することができませんでした。物の距離感を掴むことができず、お手洗いも自分で行くことができませんでした。同級生とも自然に関わることができず、クラスメイトとは一緒に授業ができないと判断されました。

そして響さんは小学3年生、8歳の時にアスペルガー症候群と診断されました。

「彼には学校でできないことがたくさんありました。その代わりに自分にできることに集中させてあげたい、と私たちは考えました。コーヒーは響にピッタリだと思いました。」と開人さんは言います。

その後、響さんは13歳の時、学校への通学をやめ、コーヒーに集中することにしました。

1kgの焙煎機をプレゼントしてもらった響さんは、その後みるみるうちに焙煎に魅了されていきました。「コーヒーのフレーバーは無限にあるんだと感じました。そのコーヒーの持つ面白さが大好きなんです。コーヒーには終わりがないんですよ。」と響さん。

今年の4月、響さんが今最も没頭しているコーヒーの焙煎と抽出を行っている小さな丘の上に、HORIZON LABOはオープンしました。そして、多くの人がこの響さんのことを知ってここを訪れるようになり、彼のコーヒーはとても美味しいという話が広まっていきました。響さんにとってプラスな効果であったことは、言うまでもありません。

HORIZON LABOは毎月1日から7日までの一週間のみの営業となります。それ以外の日は焙煎の勉強やコーヒーに関係したことをされるそうです。

今年の7月、響さんのご両親は響さんを連れてネパールのコーヒー農園を訪れました。コーヒーがどのように育つのか、その始まりを知りたかった響さんにとっては、素晴らしい経験となりました。

また数ヶ月前、響さんはコーヒー界のレジェンド、大坊さんと会う機会に恵まれ、それを機に2人は文通をするようになりました。大坊さんは響さんに、ご自身のご経験から大切だと思うことを繰り返し伝えました。「コーヒーとは、自分で味を作るものなんです。こうあるべきであるという考えや、方法などは存在しません。そして完璧なコーヒーの定義なんてないんです。」大坊さんはコーヒーのことに関してだけでなく、人生の価値観についても響さんへの手紙に書き記したそうです。響さんは私たちに美しい青色のインクで書かれた手紙を見せながら、「私は大坊さんの言葉から、大切なものをたくさん学びました。この手紙は宝物なので特別な場所に保管しています。」と話してくれました。響さんの父親の開人さんは「大坊さんからの直々のお手紙で彼の価値観をお伺いすることできて、私たち家族は幸せです。」と言っていました。

そして驚きの成功を遂げた響さんの噂はたちまち広がり、毎月1日から7日までの1週間、HORIZON LABOは丘の下まで列ができるほど大盛況となりました。自分にできる、楽しいことに注力してほしいという願いで始めたご両親は、このようなことになるとは思ってもいなかったので、一家は驚きを隠せませんでした。響さんは佐渡島からはるばる訪ねてきてくれたお客さんのお話をしてくれました。中国やタイからもお客さんが来てくれたこともあるそうです。きっとオーストラリア人の客は私が初めてだったはずです。これからも私に次いで他のお客さんもたくさん訪れるでしょう。

しかし、残念なことに、お店の混雑具合が増していき、響さんとご家族は近隣住民の方に迷惑ではないかと不安を感じるようになりました。一家は何よりも来てくださったお客さんに、コーヒーを片手にゆったりとくつろいでもらいたかったのですが、これほどの混雑状況ではそれがどうしても実現できなくなってしまいました。そしてしばらくお店を閉めて、響さんが焙煎に集中できるよう、オンラインストアのみの営業とすることを決断しました。

最近では、響さんのご両親がコーヒー以外にも様々なモノを見せ、数週間から数ヶ月かけて彼に“感じる”ことを体験できるようにし続けています。ブローチを作ったり、陶器作りをしてみたり、木版画にもチャレンジしてみたそうです。「ここは響のLABOなんです。私たちは色んなものに触れさせ、挑戦させ、体験させたいんです。」と彼の父親はおっしゃいます。

これは感動的なストーリーです。息子のためを想い、行動できる愛情深く優れたご両親のお話です。子を持つ一人の父親として、私は響さんのお父さんのお話を聞いて、人生と子供を育てるというということに関して多くのことを学びました。彼らはポジティブなことに目を向け、息子が素晴らしい人生を歩めるよう、道を明るく照らしています。そして響さんには2人のご兄弟もいらっしゃいます。彼らは響さんの生活を見て、自らの人生を考えるようになったと言います。

さあ、焙煎が始まりました。私たちは響さんが集中して焙煎するのを30分ほど見学し、そのあと響さんが淹れてくれた素晴らしいブレンドのコーヒーを楽しみました。それは桐生の街並みを眺めながらいただく、とても特別な時間でした。

お別れの時、私たちが響さんとお父さんにお礼をすると、お二人は私たちの車が見えなくなるまで手を振り続けてくれました。

私たちは車で15分程走ったところにある、NILSというとても素敵なレストランで昼食を取りました。ご兄弟で経営されているYukoさんとKeisukeさんは、ここでのコーヒーメニューを全て響さんの焙煎したコーヒー豆で提供している、と言うのです。響さんが焙煎を始めた当初から使い始め、毎月新しい豆が届くのを楽しみに待っているそうです。

これでCoffee Road Trip Part 3はお終いです。コーヒーの持つ力、素晴らしいご両親、そして明るい未来が待っている若い職人さんの素敵なお話しです。

響さんとHORIZON LABO のインスタグラムはこちら @horizon_labo

響さんのご両親のテキスタイルレーベルのリップル用品店はこちら @ripple_horizon_official

 

Article by Vaughan (@vja)

Photography by Nik van der Giesen (@nvdg81)

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