Key of the City Vol 1 – Kenji Kojima of Fuglen Coffee Roasters

Key of the City Vol 1 – Kenji Kojima of Fuglen Coffee Roasters

Release Date: Nov 2, 2017

小島 賢治氏の一杯にかけるコーヒーへの情熱は突然生まれたものではありません。小島さんは若い頃、埼玉の居酒屋でマネージャーをしていた時、仕事のストレスと疲労により吐血をしてしまうなど、体調を崩してしまうことがあったと言います。日本の過酷な労働環境で疲れ切った体と自分には何もできないという無力感に苛立ちを感じ、彼は自分の好きなことをすることを決意しました。彼は自分でコーヒーを淹れることが好きだったので、ノルウェーに旅立ち、彼のコーヒージャーニーが始まったのです。

数年後、小島さんはたくさんの国のスタンプが押されたパスポートを持って、東京の地に戻ってきました。彼は現在、富ヶ谷にあるカフェFuglenのマネージャーとして活躍し、Fuglenを日本で最も名の知れたホールセールも行うコーヒーロースターに成長させたのです。私たちは彼に時間をいただき、世界中のコーヒーカルチャーや東日本大震災、エチオピアのコーヒー生産地、そして彼の成功への鍵についてお話を聞きました。

 

ご自身のことについて、普段はどのようなことをされ、なぜコーヒー業界へやってきたのかを教えてください。

本店をノルウェーのオスロに構えるFuglenという会社に勤務しております。スペシャリティコーヒーのロースティングカンパニーも運営するFuglenは、コーヒーが楽しめるカフェであると同時に、バーでもあり、またデザインブティックでもあります。私は東京での事業のマネージャーをしており、仕事の時間はほぼ渋谷にあるロースターで過ごしています。私がコーヒーを飲み始めたのは私が10歳だった頃です。当時は母親が毎朝作ってくれた、Nescafeのインスタントコーヒーに牛乳と砂糖を入れたもので、よいものを飲んでいたわけではありませんでした。そして欧米の国の朝食のように、それと一緒にトーストを食べていたのです。母からコーヒーの淹れ方を教わると、私の抽出技術はみるみるうちに上達し、それからは毎朝コーヒーを淹れるのが日課となりました。今でも朝にニュースを見ながらトーストと共に淹れるコーヒーが一番好きです。Nescafeからは卒業していますけれどね(笑)。

東京にはスペシャリティコーヒーが飲める場所が多数ありますが、Fuglenは2012年のオープン以来絶大な人気がありますよね。その成功の秘訣は何だと思いますか?

日本にはノルウェーのコーヒー文化がないので、Fuglenはとても珍しいお店だと思います。雰囲気作りを含め、ノルウェーのカフェを東京で忠実に再現していることがポイントではないでしょうか。外のベンチやゆったりとした空間も大きな役割を果たしていると思います。ノルウェーでは太陽の光を浴びて外で過ごす時間は、人々の生活に欠かせません。そして、私たちが扱うのがコーヒーだけでないことも、一つの大きな要因だと思います。夜にはカクテルも提供していますし、それだけでなく私たちはインテリアショップでもあるんです。これが他のお店とは違うユニークな部分でもあります。そしてノルウェーのチームが東京の店舗をすべてデザインしてくれたので、店舗設計が日本のスタイルと全く異なります。また、私たちは広告費を一切使いません。ブランドを確固たるものにし続けたので、私たちの評判はたちまち広がったのです。最初の半年はやや不安定で集客が少なかったのですが、BRUTUSさんが私たちがエアロプレスを使って提供しているという記事を書いてくださってから、お客さんが一気に増えたようにも思います。

小島さんは海外で働かれた経験をお持ちだと思います。その時のお話と、ご自身にどのような影響があったのか教えてください。

私はこれまでノルウェー、そして日本でコーヒーの仕事に従事してきました。初めてノルウェーに行った際に飲んだエスプレッソの味が苦く、酸っぱかったことは今でも覚えています。まるでコーヒーの中にレモンを絞ったようでした。はじめはこのようなコーヒーが好きではなかったので、ここでは働けないと思ったのですが、1ヶ月も経つとその味が好きになり、とても軽くクリーンなカップなので、たくさん飲めるようになったのです。日本のコーヒーはとても深く濃いため、大抵の人は砂糖やミルクを入れて飲みます。ですがノルウェーのコーヒーは日本のものより軽く、紅茶のように飲めます。Fuglenで扱う生豆はノルウェーの商社から買い付けています。原産国は世界中の様々な国のものですが、まだアジアでは出回っていないものがほとんどです。フレーバーはどれもクリーンでバランスが取れていて、間違いなく私好みのものばかりです。

経験豊かなトラベラーとして、他の都市と比べて東京のコーヒーシーンをどのように評価しますか?

私が日本を離れた理由の一つの理由が、2009年当時、コーヒーに関して日本の消費者がまだ、世界の国に比べて遅れていると思ったからです。当時、カフェに行くということは月に1回程度、特別な日に行くことが一般的であったと思います。おそらくカフェで友達と会って、写真を撮って帰る。これが当時の日本では主流な文化だったでしょう。ヨーロッパの国々に比べて日本は生豆の輸送コストも高く、一杯あたりの金額が高くなってしまうので、コーヒーは特別な飲み物でした。現在のコーヒー業界は若い世代で向上していますが、まだ十分だとは言えません。ですから、私の目標は一人でも多くの人に、自分の飲んでいるコーヒーの背景をお伝えすることです。コーヒーがどこからやってきて、生産者やその他コーヒーに関わる全ての人が、どれだけ大切に育ててきたのかをお伝えできたらと思います。

東京は他の世界の都市に比べてスペシャリティコーヒーを飲む人口が少なく限られた人が楽しんでいる、ということを耳にしたことがあります。なぜこのようなことが起きるのか、またコーヒー業界が直面している問題はどのようなことだと思いますか?

私は東京でコーヒーショップをオープンさせることは簡単だと思います。しかしながら、私を含めた現代のバリスタの多くは、会社の経営の仕方を十分に学べていない可能性があります。彼らはコーヒーの抽出は得意とするのですが、ビジネス面の仕事はあまり得意ではありません。そして日本ではコーヒーには美味しい食事が一緒に必要であるとされています。しかし日本の飲食業界は非常にレベルが高く、競争率が高いという現実もあります。私はスペシャリティコーヒーに興味を持つ消費者を増やすことが必要であると考えています。東京のライフスタイルはとても早く、人々は忙しく時間がないので、自動販売機の缶コーヒーやコンビニのコーヒーを選ぶ傾向があるのも事実です。もしかしたら他の国々は、日本に比べてゆったりとしたライフスタイルでリラックスしているので、コーヒーを片手に座ってゆっくり過ごすことを好むのかもしれません。

2011年の東日本大震災のあと、福島に行かれたと伺いました。その時のことも教えてください。

友達に誘われ、何かお手伝いができたらと思い避難所へ行きました。私たちは大きな避難所を3日間で5か所まわりました。大いに共感できるのですが、「今はコーヒーではなく、そのほかのサポートと救援物資がほしい」と被災者の方から言われ、なんとも複雑な思いになりました。避難所へバスでやってくる被災者の方々は、靴を履いていなかったり、身支度が半分くらいしか整っていなかったりと、胸が張り裂けるような思いになりました。一方で、私は人々の温かさも同時に感じました。ある方が、「コーヒーが飲めるようになり、安全な場所でほっとしました」とおっしゃって下さり、いつものようにご近所の方同士でコーヒーを飲みながらお喋りができるようになったことは、彼らにとってもプラスなことであったと思います。このコーヒーの味、香り、そして空気感が、自宅にいた頃の落ち着いた気持ちにさせたのです。

ここ最近コーヒー生産者さんや農家さんを訪問されることが多く、お忙しいと伺いました。農園からカップにコーヒーが注がれるまでのプロセスと、ご自身のご経験から何をお客様にお届けしたいのか、少し教えていただけますでしょうか。

私はエチオピア、ケニア、コスタリカ、エルサルバドル、ホンジュラス、コロンビアのコーヒー農園を訪問しました。それまでの想像をはるかに超える程の仕事と苦労が農園にはありました。作物は一年365日中、ずっと世話をしなくてはなりません。これまで私はコーヒーは貧しく、高い賃金が支払われない労働環境で栽培されていると思っていました。しかし実際は異なり、生産者さんはみなさんとても幸せそうに、正当な対価が支払われてお仕事をされています。コロンビアでは農園同士の競争が激しく、労働環境が悪いと、労働者が別の農園に移ってしまうこともあるそうなので、コーヒー農園の労働環境は日々向上しています。私はお客様自身が、この一杯のコーヒーがどこからやってきたものなのかを知ることが、その価値を高めると考えています。コーヒーが生産された場所や国をイメージしたら、自分自身に「だからこのコーヒーはとても透き通った味がするんだ」、「だからとても軽い口当たりなんだ」と言うことができるのだと思います。なぜなら、そのコーヒーは幸せに働くコーヒー生産者が丁寧に、大切に育てたものだからです。

日本のパッションで溢れるロースターやビジネスオーナーに、小島さんからアドバイスできることはありますか?

私がノルウェーの企業で働いて学んだことは、従業員を大切にして育てることです。従業員を満足させること、はお客様を満足させるのと同じくらい大切なのです。会社のシステムはいつも平等でかつシンプルであることが重要です。人の一般的な労働時間は一日8時間、週5日とされています。しかし日本の飲食業界で働いていると、一日10時間、週6日働くということも少なくありません。Fuglenは日本の会社ではないので、労働環境はこれよりもはるかに良いです。私自身がとても良いライフワークバランスで働いているので、従業員の労働環境を守ることや本当にやらなくてはならないことに注力できるのです。個人的なアドバイスを挙げるとしたら、私は自分の決断は一切振り返らず、悔やまないと決めています。私はご自分が決めたことは必ず良い選択だと思います。なぜなら、あなたはいつも何かを学び続けているからです。私はいつも自分のしたくないことではなく、したいことに焦点を当てて将来へ向かって夢を見ています。

これから実現させたいプロジェクトやお仕事はありますか?

私の夢はコロンビア南部のNariñoにコーヒー農園を買うことです。ここにはBuesacoという美しい小さな街があり、コーヒーがなんとも美味しいのです。リラックスして美しい自然とお気に入りコーヒーを楽しみたいですね。

東京で過ごす理想の一日のプランを教えてください。

朝起きたらコーヒーを淹れて(Nescafeではありませんよ)、家でニュースを見ます。そのあと代々木八幡にあるPathで朝食を食べて、渋谷に出ます。もしかしたらそのあとは築地に行って美味しい海鮮ランチをチェックしに行くかもしれません。そのあとは山手線に飛び乗って上野を目指し、散歩をしながら博物館を見学したり、商店街や伝統的なお寺などを見に行きます。日が落ちたら浅草にある私のお気に入りの米久本店という老舗で、夕食にすき焼きを食べます。夜の最後は新宿のパークハイアットにあるNew York Barでジャズとシガーとお酒を楽しみたいですね。

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Interview by Megan Kimberley (@megkimberley)

Photography by Nik van der Giesen (@nvdg81)

AUTHOR

Megan

Megan

Megan is a marketer and writer from ‘down under’ Australia. When she’s not exploring Japan, you can find her taking photographs and eating pizza. @megkimberley

https://megkimberley.tumblr.com/

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