CULTURE IN A CUP – VOL.2 Maja Coffee Roastery, Helsinki

CULTURE IN A CUP – VOL.2 Maja Coffee Roastery, Helsinki

Release Date: Jun 29, 2017

ヘルシンキ中心部からバスで30分ほどのLehtisaariという小さな島に位置するマイクロロースター。オーナーのタパニさんとかやさんご夫妻にお話を聞きました。

<木の暖かさが感じられる椅子やテーブルといったインテリアはお二人自身によるもの>

 

はじめに、ご自身について少し教えていだけますか。

Tapani: だいたい2年半ほど前にここにカフェ・ロースターをオープンしました。もともとはキュレーターとしての仕事を10年以上しています、日本でも2年ほど。アート作品を美術館に設置したり、展示のための木工などもしています。

では、カフェでのお仕事は元のキュレーターのお仕事に加えて、ということなんですね。どうしてカフェをオープンされようとお思いになったんですか?

Tapani: コーヒーは、趣味なんです。妻の出身である今治市の喫茶店「アポニー」で、初めて焙煎されたばかりの新鮮なコーヒーをに出会いました。なのでコーヒーに興味を持つきっかけは日本での体験でした。アポニーのマスターが色々と教えてくれて、そこからどんどんハマって…自分で家で焙煎をするようになりました。

Kaya: 私たちヘルシンキに移住してきて10年ほどになりますが、きた当初は今のようにカフェやロースターがたくさんあったわけではなかったんです。Kaffa Roasteryがちょうど始めたくらいだったと思います。

そうなんですか。フィンランドのコーヒーカルチャーは、ずっと前から盛んだったと思っていました。最も多くのコーヒーを消費している国ということで有名ですよね。

Tapani: 100年以上前から、フィンランドには100を超える自家焙煎のお店がありましたし、それに加えて多くの人が自宅で焙煎をしていたんです。1年の間にに一人あたり2kgのコーヒー豆を消費していたと言われています。1904年にPaulig (フィンランドの老舗コーヒーロースター。ヨーロッパを中心に大規模なシェアを占める企業) がフィンランドで開業すると、少しずつこうした小さなロースターが減っていき、100年後の今またブームが来たという感じです。

歴史は繰り返す、ですね。

Kaya: タパニはヘルシンキでの選手権にも出場するようになって、ベランダで焙煎した豆で入賞したりしてました。

<店舗以外にも、2016年のヘルシンキアートミュージアムでの草間彌生の展示と、今年はご近所のDidrichsen Art MuseumでのJuho Rissanenの展示とコラボレーションした豆を販売した>

ベランダで..!びっくりです。では、最初はまず焙煎に興味があったということですか?

Kaya: フィンランドに移り住んだばかりの時は、漠然とカフェがやりたいね、という感じでした。そして私たちがどちらもアートに携わっているので、なにかをクリエイトするということは大事なことでした。焙煎なしではそういう自分たちの味は作れないよね…という流れで、焙煎をとにかくしてみよう、と。

この場所を選んだのにはどういった理由がありますか?

Kaya: ここからすぐ近くにDidrichen美術館があります。以前タパニがそこでのヘンリームーアの展示に関わっていて、その展示のオープニングパーティに行ったんです。夜の空気と庭の彫刻とが合わさってとてもいい雰囲気で…美術館にセンスを感じたところから、このエリアの魅力に気がつきました。それで、周辺を歩き回っていたらこの場所を見つけたんです。ヘルシンキでは焙煎をするのにクリアしなければいけない制限が多々あるのですが、そういうったものも全てクリアしていて。カフェの立地としては少し向いていないとは思いましたが、焙煎に重きを置いていたので、ここにしよう!と。

このエリア、静かで自然に囲まれていてとても素敵です。

Kaya: とにかく焙煎に重きを置いて始めようとオープンしましたが、お客さんはこないだろうなぁと思っ ていました。市街のカフェのように歩いていてふらっと入ってもらう、という集客の仕方はできない立地 ですから。しかし同じ理由で、街から離れた秘密基地のような感覚で、少しづつですがお客さんに気に入 ってもらえたように感じています。”Maja”はフィンランド語で子供の作った秘密基地といった意味があるんですよ。

私も初めて来た時には、”発見した!”という感覚の嬉しい驚きがありました。

Kaya: この立地が功を奏すというのは、オープンする前には全く想像していなかったことでした。 私たちのカフェを目的に、わざわざここまで来てくれるというお客さんのモチベーションは、市街にあるカフェとの大きな違いかもしれません。そういう意味で、素敵なお客さんとの繋がりが生まれて、努力のモチベーションにもなっています。ここまで訪れてくれるのだからより良いものを、というように。少し忙しいですが。続けていられるのはそういう理由もあります。

<白山陶器のカップでサーブされるコーヒー>

Tapani: お客さんだけでなく、ヘルシンキの他のカフェ、ロースタリーとの関係にも恵まれているとおもいます。カフェをオープンする前にすでに焙煎を始めていましたが、その時は Helsingin Kahvipaahtimo (Helsinki coffee roastery) に焙煎機を借りていました。生豆については、Good Life Coffee、Kaffa roasteryなどがNordic approachの倉庫からオーダーする時に都合をつけてくれて私たちシェアしてくれています。私たちはパレットで買うには規模が小さすぎるロースターですのでとても助かっています。ヘルシンキでは、競争店同士というよりはこういった温かくフレンドリーな繋がりが感じられます。彼らには頭があがりませんね。

エスプレッソマシンを置いていないのには、何か理由がありますか?

Tapani: 他店を訪れた時はもちろん飲みますよ。オープン時、他のカフェ仲間にはエスプレッソ無しはちょっと厳しいんじゃない?と言われました。事実、例えばKaffa roasteryで私がオーダーした一杯のサイフォンが挿れられている間にラテやカプチーノは10杯以上オーダーされます。最近でこそだんだんハンドドリップが一般的になって来ていますが、それでもエスプレッソ系ドリンクの方がずっと集客するには分があります。それでも、自分が提供するとなると…あまり興味が湧かないんです。日本でコーヒーにハマった自分にとっては、それが自然といえば自然なことです。

Kaya: 多くのドリッパーやコーヒー器具が日本製ですよね。もしかしたら日本人の気質がそういうところに出ているのかもと思います。技術にいちからこだわることが好きな、職人的な気質がありますよね。

<ヨーロッパではまだ珍しく感じられるKONOで抽出>

日本で特に気に入っている喫茶店やカフェはありますか?たくさんいらっしゃってるので、決めるのは難しいかもしれませんが。

Tapani: 岐阜県の待夢珈琲はとても印象的でした。それまで知っていた味とは全く違うコーヒーを味わいましたね。神奈川県のcafe vivement dimancheも素敵です。コーヒーが美味しいのはもちろん、CDとかアパレルも置いていて..マスターの趣向が感じられて面白いですよね。東京のOmotesando Koffeeも、とてもサービスが良くて印象的でした。

Kaya: 日本の喫茶店では、バリスタという言葉よりも”マスター”の方がしっくり来る感じがします。タパニがあげたような喫茶店では、マスターの豊富な知識やそれぞれの哲学からなる個性的なスタイルを持っていて、お店やコーヒーの味にそのまま映し出されているように感じます。それが喫茶店やその文化を面白くしているのだと思います。コーヒーが美味しいのはもちろんのこと、それ以上にマスターやそのお店独自の個性を一杯の中やお店の中に感じる場所という感じでしょうか。

なるほど。それぞれのお店が全く違った強いキャラクターを持っているのが喫茶店の面白いところですよね。趣味としてコーヒーに携わりはじめて、もともとの仕事に加えてカフェとロースターを続けていらっしゃいますが、多忙さをはじめとして大変なことは少なくないのではないでしょうか?

Tapani: うーん…でも自分自信もおいしいコーヒーを毎日飲めますからね!ゲストと同じように、私たち自身がコーヒーを楽しんでいますよ。

なるほど..。私自身は、ここでは北欧らしいゆっくりとした空気とと日本らしい細部へのこだわりといった要素の混じり合い、あるいは似ている点も感じました、どこか不思議で心地よい感覚です。改めて、素敵なお話と時間をありがとうございました!

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このシリーズでは、場所によってそれぞれのコーヒー文化が根付いてことを実感するとともに、日本の喫茶文化の面白さを再発見することができた。抽出や焙煎の技術といった実践的なことからコーヒーに対する考え方、雰囲気といった要素が文化を形成する中で、今回取材した二つのカフェロースターでは違った文化が混じり合い、また新たな魅力が生まれていた。様々なタイプのコーヒーに幅広く触れることで、コーヒーシーンがより興味深いものになるのではと感じた。

 

Interview by Misa Asanuma @asnm33

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