コーヒーチェリー熟成の画期的なアプローチを体験

コーヒーチェリー熟成の画期的なアプローチを体験

Release Date: Sep 21, 2018

コーヒーの味をより美味しくするアプローチはどんなものがあるだろう?

この話は、現在世界中で色々と考えられていて、ある人は最高のコーヒーの木を求めて世界中を旅し、ある人は収穫から精製までの工程でより良い生産体制を構築したり、品種改良によって理想の味を作り上げたり、はたまた土を研究する。

そして、そういった取り組みがコーヒーの競技会やカンファレス、または様々なメディアで取り上げられており、技術自体は日進月歩なため、ここでは割愛するが「品種改良」「農地開発」「精製技術」「生産体制」「焙煎技術」「抽出技術」といったところがその中でも良く聞くキーワードだ。

特にスペシャルティコーヒーは関与する全ての人が味に影響を与えると言われ、少しでも味を悪くする工程を排除するという減点方式で豆を扱うことで、豆本来の味をカップに届けるという文化がある。
まさに “From seed to cup”の精神だが、今回はチェリーの話のため、あくまで生産部分に注目したい。

コーヒーは農作物の1種であることから自然環境に影響を受けやすく、現在スペシャルティコーヒーで主流となっているアラビカ種をベースとした品種は、サビ病などの感染症に弱く、育成環境を選ぶ。しかも苗を植えてから収穫まで3年ほどの年月がかかるため、一旦ダメージを受けた場合の影響は計り知れない。

病気以外のリスクとして言われているのが、地球温度の上昇による育成環境の変化だ。

コーヒーベルトと呼ばれるコーヒー育成に適した環境 (赤道に近く、高地) がここ数年で変化している問題がある。つまり、美味しいコーヒーを生産できる場所は少しずつ減ってきているという事だ。

そうした問題にも取り組んでいる企業が日本にもある。それは多少驚かれるかもしれないが、喫茶店のイメージが強いキーコーヒー株式会社 (以下KEY社)だ。

1960年代にインドネシア・トラジャ地方に農園を開拓した歴史があるKEY社では、コーヒー好きやバリスタには「SCAフレーバーホイール」でおなじみの World Coffee Research (WCR) と協業し、40種類を超える品種栽培試験を2016年より開始。

トラジャ地方の自社農園でこういった取り組みを行うことで、将来的にはインドネシア、タイ、ベトナム、ラオス、東ティモールなどの東南アジア環境でよりよい品種を育成できる様になると、近場の日本としても少なからず影響がある為、期待したいところだ。

また、KEY社では栽培のアプローチの他、コーヒーの精製工程における加工技術の開発を行っており、そこから生まれた画期的なアプローチとして、昨年末のプレスリリースで新しく発表された「KEY Post-Harvert Processing®」という精製技術があり、そこにも注目していきたい。

 

コーヒーチェリーの氷温熟成® KEY Post-Harvert Processing® (以下 KEY-Pos)

Good Coffee ではこの新技術について取材を行ったところ、元々は輸入されたグリーンビーンズへの「氷温熟成®」という技術をコーヒーチェリーに転用させたものだという事。

摘みたての完熟チェリーは足が速く収穫直後から劣化が始まるため、速やかに氷温庫に保管させることで、腐敗を防ぎつつもチェリー自体が追熟状態を作り出したという事だ。

KEY社で発表しているデータによると、KEY-Posによって、ショ糖やアミノ酸などの成分量が増加している事がわかることから、コーヒーの味の向上において有効なアプローチだという事がわかる。

 

特に東南アジアは湿度が高いという特徴があるため、ナチュラル・ウォッシュト問わず精製についてはどこも苦労している。そんな中でチェリーの状態から安定した環境で追熟させ、その後の精製されていくアプローチは斬新で、この技術が各地で活用される事でコーヒーの品質がさらに上がるのではないかと期待される。

KEY社では現在試験運用を経て、ようやく今年の秋にファーストロットが日本に到着するというまさに稼働し始めの最新技術だ。

 

KEY-Pos をカッピング

今回、Good Coffee では貴重なファーストロットを20gほど入手できたので、比較としてこれまでのトラジャコーヒーや、その他のインドネシアコーヒーとともに、バリ島で精製所を建設したばかりのLIGHT UP COFFEEの川野氏とカッピングを行った。

ラインナップは以下の4種類。それぞれ焙煎日や品種も違う為、パブリックカッピングの形式で行い、それぞれのコーヒー味わった上でKEY-Posの感想をまとめられるようにした。

・トアルコ・トラジャ ピーベリー
・トアルコ・トラジャ KEY-Pos
・インドネシア・バリ ウォッシュト
・インドネシア・バリ ナチュラル

LIGHT UP COFFEE のインドネシア・バリも上質で柔らかい酸があり、ナチュラルはアップルタルトのようなクッキーの様な香ばしさとコンポートされたリンゴのような甘さが特徴的だった印象がある。

どれも十分に美味しいコーヒーだが、KEY-Posについてはまずはじめに驚きから始まった。

口に入れた瞬間に「ジューシー!」とシンプルに感じるほどギュッと詰まった味は「成分量が多い」というのはこの事かと納得。知らずに出されたらインドネシアとは絶対に気づかない明るいコーヒー。

チャイを思わせるスパイシーな1口目からしっかりボディ感を感じ、温度帯が下がるとアメリカンチェリーのような赤い果実の酸味を柔らかく感じるようになり複雑な印象。

ウォッシュトと聞いていたが口に広がるブランデーの様な揮発性の甘みは氷温帯で熟成が進んだ結果によるものと想像されるが、温度が落ち着くとプラムのような丸い甘さに変化して余韻の続く心地よい甘さを楽しめる。

川野氏との意見交換の中で上記の感想というのがカッピングのコメントだった。
日本での流通量はそこまで多くないと予想されるが、ぜひ見つけた際は試していただきたい。

 

トアルコ トラジャKEY Post-Harvert Processing ®を飲んでみよう!

そんな KEY-Pos が先行して楽しめる場所が9月東京にやってきます。

それは、9/26-28 まで東京ビッグサイトで開催される日本最大のコーヒー展示会「SCAJ2018」と、
9/29-20 の週末に青山・国連大学中庭で開催される「TOKYO COFFEE FESTIVAL」。

どちらもトアルコ・トラジャとKEY-Posの紹介をしており、一部数量限定でKEY-Posの試飲も行う予定。

また、TOKYO COFFEE FESTIVALでは、カッピングを行った LIGHT UP COFFEEの川野氏と、トラジャ地方に長年に渡り赴任していたキーコーヒー株式会社の佐藤氏によるトークセッションも行います。

ともにインドネシアでコーヒー生産に関わる両氏による、アジアのコーヒーの熱い話が予想されますので、お楽しみに!

 

イベント出展概要

SCAJ2018
日時:2018年9月26日(水) – 28日(金)
会場:東京ビッグサイト西ホール3,4
ブースNo.3002

TOKYO COFFEE FESTIVAL 2018 autumn
日時:2018年9月29日(土) 30日(日)
会場:東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学前広場
会場内テントブース
URL:https://tokyocoffeefestival.co

TALKING ABOUT ASIAN COFFEE
日時:2018年9月29日(土) 13:00-14:00
会場:Farmer’s Market Community Lounge (会場内隣接屋内スペース)
定員:40名 (定員に達しました。立ち見可能)
料金:無料

 

編集後記

今回の取材とカッピングを通じて、先人の取り組みと大手だからこそできるアプローチや社会的意義について理解した部分もあり、トークイベント「TALKING ABOUT ASIAN COFFEE」ではそのあたりも触れていきたいと、絶賛企画を練りこんでいる所です。

大手に対するカウンターカルチャーから発生した「サードウェーブ」という言葉が浸透した事によって、無意識に旧世代と新世代の線引きがなされてしまっている感があるが、同じコーヒーを愛するもの同士、フラットに考えを共有できる時代に向かって行けると、さらに日本のコーヒーシーンが良いものになっていくのではないかと考えています。

 

Photo:キーコーヒー株式会社提供 / Takahiro Takeuchi / Tomohiro Mazawa
Text:Takahiro Takeuchi

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