Release Date: Jul 22, 2017
コーヒーの”かす”が環境にどれほど影響しているか考えたことはありますか?現状を変えることはできるのか?またしてもコーヒーの中心地、メルボルンで新たな動きが起こっています。今回はVaughan がREGROUND のNinna LarsenとKaitlin Reid に話を伺います。
Vaughan: REGROUND の活動内容を教えてください。
Kaitlin: REGROUND は新しい形の廃棄物回収団体です。ミッションは「廃棄物を資源に変えること」。それもメルボルン発、今はコーヒーの出し殻収集を専門としています。カフェやロースタリー、オフィスなどから出し殻を回収して、主に自家農園やコミュニティ・ガーデンなどで必要としているエンドユーザーに届けます。コーヒーを自然の土に返すというサステイナブルな過程を通して、より根深くコミュニティとつながるきっかけを提供しています。
Vaughan: REGROUND のサービスを利用していない場合、通常はコーヒーの出し殻はどうなるのですか?
Kaitlin: オーストラリアのほとんどのカフェ、ロースタリー、オフィスそして家庭では一般ゴミとして廃棄されるので、結果的には埋め立てゴミになります。そこでメタンガスという、車による炭素汚染のおよそ2oから40倍も有害なガスへと変換されるので、埋め立てゴミというのは環境にとって実は最悪な結末なんです。今までメルボルンのカフェやロースタリーでは、コーヒーの栽培からカップで提供されるまでの過程で品質、サステナビリティ、倫理基準などに傾注していたのですが、その後のプロセスに関しては意識が希薄だったのです。というよりも、今までは選択肢がなかっただけなので、REGROUND の活動内容を知るとほとんどのカフェが賛同してくれます。「我々も同じことを考えていたよ」と言う方がたくさんいらっしゃるのは、REGROUND は当然であるべきことに気づき、習慣化するきっかけを提供しているという証拠です。
Vaughan: 顧客確保の流れはどのようなものですか?営業、もしくは口コミが多いですか?すでに利用しているカフェはありますか?
Kaitlin:とても幸運にも、Padre やSeven Seeds などメルボルンのコーヒーシーンを牽引するカフェがREGROUND の最初の顧客になってくれました。シンプルなコンセプトを掲げ、すでにたくさんのお客さんに愛されているカフェだったので、私たちの活動普及に大いに貢献してくれました。おかげで現在はカフェ側からコンタクトされる場合が多いですが、ビジネスを拡張するにつれその体制も変わってくるかもしれません。エリア内のカフェでしたら、活動内容だけでなく私たちの存在意義を説明する時間を最初にしっかりと設けます。理念、持続的な習慣、その他の廃棄経路についてなど。頻繁に話題に上がるのが、回収費用が発生するという説明です。たまに無料サービスだと思っている人がいるのですが、これは一般ゴミ回収にすでにお金を払っているという自覚があまりないことに起因します。だからこそ、私たちのサービスを利用することは追加料金が発生している訳ではなく、これまでの廃棄習慣を見直し、不要だと思っていたものを農作業をしている人に還元するコミュニティ活動なのだと説明させてもらいます。顧客にとって、どこの誰にいくら届けられ、結果としてどれくらいメタンガス発生を抑えられたのかなどは貴重な情報なので、REGROUND は透明性をとても重視しています。今ではREGROUND によって使用済みの豆を埋め立てにしないようになったカフェやロースターは、全部で30店舗になりました。最近、クラウドファンディングで専用のトラックを購入したこともあり、周囲のコミュニティの力も借りながら、さらに大きな規模で影響を広げることをとても楽しみにしています。ウェブサイトに持続的なコーヒー廃棄を行なっている店舗のリストを載せているのでぜひ見てみてください。
Vaughan: エンドユーザーにはどのような人がいますか?どのような関係性ですか?
Kaitlin: Ninna と私はここ10ヶ月間、自分たちで直接コーヒーの出し殻を引き取ってエンドユーザーへ届けていたので、彼らとはとてもパーソナルで近しい間柄です。Ninna が言うように、以前はコーヒーの出し殻を使う利点について啓蒙することがそもそもの仕事になっていましたが、今では口コミで広がり、良質な肥料1トンを無料で家に届けてもらえるサービスということでメルボルン中の農家さんやガーデナーからお問い合わせいただいてます。一言にエンドユーザーと言っても家庭菜園が趣味の方、もうすぐ定年を迎える方、常に新しく持続的な方法でガーデンを美しく保とうとする方など色々いらっしゃいますが、特にStuart は印象的なユーザーです。自分で木炭を作ったり、栽培した新鮮なアスパラガスをその場で引っこ抜いて味見させてくれたり、今まで口にしたことないほどジューシーなアプリコットを木からもぎ取って切り分けてくれたり、袋いっぱいのレモンや巨大ズッキーニをくれたり。知識豊富で面白い方なので、一緒にコーヒーの出し殻を畑に撒いて耕している間、話題に事欠くことはありません。また、West Brunswick Community Garden というボランティア団体はたくさんの野菜、ハーブ、お花を育てていて、その代表で堆肥作りの担当者であるRichard は、堆肥を作るスペースを持たない近所の人々が自宅から持ちよってきた生ゴミから堆肥を作り、管理しています。彼が声高にREGROUND を賞賛してくれているのをよく耳にしますが、コーヒーの美学と堆肥作りへの効果を本当に理解しているRichard だからだと思います。また、私たちも彼らのようなコミュニティ・ガーデンを賞賛します。このような関係が、REGROUND をREGROUND 足らしめるのです。
Vaughan: オーストラリアのコーヒー・コミュニティをどのように啓発・指導していますか?まだその初期段階でしょうか?
Ninna: REGROUND の成功の鍵を握っていたのが啓発・指導だと思います。REGROUND が2014年に始動した時には、まだまだ出し殻の有効活用法については認識が希薄でした。私はバリスタ、マネージャーやカフェオーナーとの些細なやりとりの中でも有効活用の大切さを説くようにしていましたし、SNS では分かりやすい解説を心がけていました。徐々に説明することにも慣れて、今では大半のメディアが私たちの活動を支持してくれています。きっとより多くの人がゴミを有効利用することを受け入れ、活動の土壌が整ったのだと思います。しかしコーヒー産業全体を引き込むにはまだまだ努力が必要です。
Vaughan: 二人はどうしてコーヒー好きになったのですか?また、REGROUND のアイデアはどうやって生まれたのですか?
Ninna: 私はデンマーク出身なのですが、デンマークではオーストラリアよりはるかにサステナビリティに対する関心や意識が高いです。幼いころから社会や環境の変遷に興味があり、デザイン・文化・経済学を学んでいましたが、消費促進のためのデザインではなくサービスや社会貢献のためのデザインにしか興味がありませんでした。メルボルンへ来る直前までThe Danish Cultural Institute でアートを介してサステナビリティの重要性を発信する仕事をしていました。オーストラリアへ旅行した際にSeven Seeds で働くことになり、旅人にはよくある話でサービス産業に従事するようになりました。それからThe Brunswick East Project で働くようになりましたが段々その生活に飽きてきたところで、コーヒーの出し殻を毎日オフィスの一般ゴミに捨てていることが気になり、それを解決する方法を模索するようになりました。それがREGROUND の出発点です。まずゴミ箱を購入しEasty のサービスを試してみました。産業にはすでにたくさんの人脈があったので、始動初日からネーミング、ブランディング、そして価格まで、様々な人に意見やアドバイスを求めました。REGROUND はこの産業の思いや知識が詰まった会社です。The Brunswick East ProjectとSeven Seeds には最初のクライアントになってもらいましたが、我が社への貢献と影響は計り知れません。
Vaughan: 他国にも似たような活動があるかご存知ですか?または、コーヒー産業において感銘を受けた環境保護活動やサステナビリティ推進活動はありますか?
Ninna: 海外で似たような活動があるかは知りません。各国によって廃棄物の回収・処理方法は異なるので。内容としてはイギリスのBioBean が最も近いのではないでしょうか?彼らはどちらかというと分配業者というよりもエンドユーザーに近い立場だと思います。近年まで環境問題の啓発やサステナビリティはコーヒー産業の主軸ではありませんでした。むしろテクノロジー革新とその結果が一番のフォーカスでしたから。確かにコーヒーを作る上で機材のパフォーマンスと利用性ともにトップ・クオリティであるべきですが、建築、機材、そしてお客さんの習慣をいかに環境に優しいデザインへと導いていくのか。美しくて美味しい一杯のコーヒーを心から気持ち良く味わうために、それを実現するにはまだまだ道のりは長いです。
Vaughan: トラック購入のクラウドファンディングに成功したと伺いました。おめでとうございます!これは世界中のコーヒーラヴァーがREGROUND の信条に賛同したということですね。
Ninna: ありがとう!支持者に囲まれているということはとてもラッキーだと思います。コーヒー愛飲者やプロの多くは、コーヒーを取り巻くポジティブな変化に敏感かつ協力的です。クラウドファンディングは大変でしたが、やり甲斐のある仕事でした。必要とされている限り、コミュニティをがっかりさせるような結果にしたくありませんから。
Vaughan: REGROUND の将来の展望は?
Ninna: とても明るいと思います。REGROUND は埋め立てゴミを生ゴミへと転ずる活動を続けます。コーヒーの出し殻を、そしてロースタリーからはもみ殻も回収しているので、私たちは何トンもの生ゴミを埋め立てゴミになる運命から救済する使命を負っています。REGROUND は、企業には社会と環境へ及ぼす影響に対する責任があり、またそれを果たすことも可能だと信じています。株主への利益還元よりも長期的に見て社会もしくは環境の改善には何が有効か、それを考えられるような企業や未来のリーダーを育成するよう働きかけています。言い換えれば、私たちはビジネス・サクセスの概念を再定義しようとしているのです。国中に堆肥化施設を建築するよう政府に働きかけられるよう、公での影響力を身につけ、有害な埋め立てゴミを根絶したいです。いずれオーストラリア全土に活動範囲を広げ、埋め立てゴミから生ゴミを減らすだけでなく、個々人が自宅でできる小規模な取り組み(例えば家庭用コンポストを使用するなど)を提案して、長期的な環境改善に貢献していきたいです。
REGROUND のインスタグラムはこちら (@_reground)
また、彼らのウェブサイトはこちら http://www.reground.com.au
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Interview by Vaughan (@vja)
Translation by 瀬尾茉莉花 (www.marikaseo.com)