An interview about Blue Bottle Coffee Quality Control – ブルーボトルコーヒーのクオリティコントロールとは

An interview about Blue Bottle Coffee Quality Control – ブルーボトルコーヒーのクオリティコントロールとは

An interview about Blue Bottle Coffee Quality Control – ブルーボトルコーヒーのクオリティコントロールとは

Release Date: Mar 15, 2016

日本上陸から1年、現在では清澄白河ロースタリー&カフェ青山カフェの2店舗を展開しているブルーボトルコーヒー。2016年3月25日(金)には、新宿カフェのオープンも決まっています。

今なお大注目のブルーボトルコーヒーですが、その理由ともいえるコーヒーへのこだわりについて、クオリティーコントロールマネージャーのケビン・サクストン(Kevin Thaxton)氏(以下K)と、リードロースターのムネシマ ユキ氏(以下Y)にお話を伺いました。

 

編集者(以下GC): Blue Bottle Coffeeの重要視するQuality Control (以下QC) について教えてください。

K: QCについて私はマネージャーという立場ですが、1人で完結する仕事だとは思っていません。全体で完結する仕事です。
チームワークとしては、まず焙煎士が所属するプロダクションチームでローストしている豆がきちんと焼かれているのかを確認するところからスタートし、その後トレーナーとバリスタが、実際どのようにお客様にご提供できるコーヒーを抽出しているのかというところまでをチェックするのが私の役目です。
1人で全てを見ているというのではなく、みんなで最終ゴールに向けて動くということが、自分のQCというイメージです。

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GC: 厳しい基準をクリアするために、具体的にどんな所をチェックされているのですか?

K: 最初にやらなければいけないことは、生豆の状態の品質がどうなのかというところです。それはプロダクションチームに所属する焙煎士とともに、焙煎された豆をカッピングすることによって、実際にその豆の味がきちんとでているのか、これが正しいターゲットに向かっているのかを一緒に確認していきます。それは1チームとして、カッピングという方法で評価しています。こうしてできあがったコーヒー豆を、ベストな状態で実際にカフェで提供していくために、トレーナーやリードバリスタとともにレシピを作ります。そのレシピをもとに彼らが、バーで働くバリスタたちに落とし込んでいき、お客様にご提供できるレベルに育てていくという流れになっています。ですからバーに入ってしまうと私が直接指導するというより、彼らが間に入ってレシピ通りに現場を動かしていきます。当然自分自身がカフェに行って、ランダムにチェックしたりすることもありますが。

 

GC: それは本国アメリカと比べて違いはありますか?

K: Blue Bottle Coffeeのメソッドは全拠点で同じです。ロースタリーがある4拠点(サンフランシスコ、日本、ロサンゼルス、ニューヨーク)にはそれぞれQCマネージャーがいて、そのメンバーが同じように各拠点のプロダクションチームとともに味を作っていくことをしています。そのためそこでの違いはありませんし、そのメンバーとは毎週ミーティングを行っています。ミーティングでは集めているデータや、チェックしているポイントを共有しています。

それに加えて、月に一回各拠点で焼かれたブレンドのエクスチェンジ(日本のものを各拠点に送り、各拠点のものを日本にも送ってもらう)を行っています。豆が届くタイミングでカッピングをし、各拠点で焼かれている豆の味が同じかを体感しています。同時に、スコアしているポイントについても同じ評価ができているかどうかを確認し合っています。

日本のマーケットにおいて、ターゲット(日本人)に合わせて味を変えているのかという点については、日本上陸の際に、日本人は『酸味の強いコーヒーは好まない』『20種類位は豆の種類がないとダメなのでは』『ミルクはもっと温かい方がいいのではないか』など、色々な意見をいただきました。それに向けてオープンする前はアジャストしなくてはと考えた時期もありましたが、ジェームスと話をしていく中で、やはり〈自分達が正しいと思うもの〉 〈自分達が今までやってきたもの〉で自信を持って、きちんとご提供することがまずは正しいカタチなのではないかという結論に行き着きました。
こうかもしれない、こうだよねという想像で味を決めてそれをご提供するのではなく、自分達がやってきたやり方で、焙煎もブリューイングもご提供するのが正しいという結論に至ったのです。

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GC: QCをしてきた中で最も難しかったエピソードを教えてください。

K: 日本に限らず、新しいマーケットにいく度に、その環境にどう適応するかというところはすごくセンシティブで、大切なポイントだと思っています。自分たちが良いものだよ、どうぞ。というのは簡単ですが、実際にそれが受け入れられるのかはやってみるまでわかりません。逆に自分たちがこれまでやってきた事を信じて貫こうと決断することも難しく、すごく強い意志がいることなので、今の味の決め方に至るまでのディスカッションというのは、すごく難しい時期だったのかなと思います。

 

GC: 日本のQCをマネジメントする中で、日本人の味に対する感覚をどう感じますか?

K: 例外は色々とありますが、感じる事としてはアメリカではTO GO(テイクアウト)のお客様が多く、生活動線の中にコーヒーショップがあって、そこでコーヒーを購入しすぐに次の場所に行くというのが今までアメリカで見てきたお客様のコーヒーショップの利用方法でした。しかし日本(清澄白河ロースタリー&カフェ)では、一杯のコーヒーを注文し、香りを楽しんで、少し待って、一口目を飲んで…というそのプロセスをお客様がお店の中で実践されている瞬間をよくみます。それはすごく面白いことですし、そのような光景はアメリカではあまり見られません。コーヒーショップとしての使われ方の違いを一番感じています。

 

GC: なぜアメリカではそのような光景が起こらないのでしょうか?

K: 難しい質問ですね(笑)
文化的な背景として、コーヒーは家で起きるために飲むものというところから始まっている部分もあるのではないかと思います。当然その当時(2、30年前)は、味が一番ではなくカフェインを摂るという習慣のようなもので、それを飲みながら会社に行くということが主流でした。そこからよりレベルが上がり、新しい価値に変わってきているものの、そのバックグラウンドから始まっているカルチャーとしてコーヒーがあるので、飲みながらどこかにいく、飲みながら何かをするというような使われ方が多いのではないでしょうか。

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GC: スペシャルティコーヒーのQCは難しいと思いますが、成功させるノウハウとしてどのような事に気をつけていますか?

K: 色々な見方があるかと思うのですが、まず一つはジェームスがよく言うことで、『拡大していくと品質って落ちるよね』と色々なところで聞かれる中で、僕たちはクオリティを維持することを、広げながら維持するのではなくて、規模を拡大しながらさらによくする事が広げるということの意味なんだと考えていて、それを大切にしています。
確かに今まさにそれが起きていて、インフラと呼ばれるクオリティコントロールの部署ができたり、システムが整って情報が共有できるようになったり、そのデータ量が貯まってきたりというところで、もっと効率良く効果的にクオリティコントロール可能な環境ができてきています。そういう意味ではクオリティコントロール部があることで規模が広がりかつ、より良くしていくということが叶っていると思っています。会社としてもすごく重要な機能だと考えています。
もう一つは、全く気が付かれない部署でしょうし、お客様側からはこういう組織があることは全く知られていませんが、それはそれでいいと思っています。自分たちが最終的に目指すゴールは、美味しいコーヒーを届けるということだけなので、そのために裏方としてただひたすらゴールに向かって進んでいくということだけです。そのために『どうしたらより美味しいコーヒーになるか』という細かい話を日々チームメンバーとやりとりしていて、それが最終的にお客様に届いた時に良くなっていることを信じて取り組んでいます。

 

GC:日本ではテレビなどで取り上げられ、サードウェーブ系コーヒーショップではかなりの知名度があると思いますが、実際に店舗でコーヒーを飲んだ方にどういった事を感じて欲しいと思いますか?

K: 私は味を作っているものの、それがあってこうして欲しいという強い意志はありません。本当に”ナイスタイム”を過ごしていただければそれでいい。ただそれだけです。
もちろん、その”ナイスタイム”をつくる要素としてコーヒーがおいしいと思っていただけたらそれが私の仕事にもつながるのですごく嬉しいことですが、バリスタとの会話やお店の空間でホッとできたりするなど、すべての要素が”ナイスタイム”につながればいいなと思っています。シンプルにそれだけです。

 

GC: “焙煎後48時間以内の豆をお客様に提供する”というルールを決められている理由は?

Y: 焙煎して48時間以内のものを「販売」はしていますが、48時間以内のものを「抽出して提供している」訳ではありません。そこが難しいところで、恐らく記事を読まれた方メディアを通して知られた方は、「48時間以内のコーヒーを提供しているんだ」と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。販売用のコーヒーはできるだけ早くお客様の手元に届けたいというジェームスの思いで、いつ焙煎したかわからないような、賞味期限しか書いていないようなコーヒーではなく、48時間以内のものをお客様に販売して、できるだけ早く家に持って帰っていただき、美味しいピークの飲み頃のコーヒーをできるだけ長くお家で楽しんでいただきたいという思いで、48時間以内のものを販売しています。抽出に関しては、かなり細かくケビン達がエイジングを決めています。そのため提供しているコーヒーに関してはエイジングさせたものをだしているので、48時間以内のものではありません。

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GC: 豆の取り扱いについて、前問のルール以外に大切にされている事はありますか?

Y: 袋詰めをしてくれるスタッフが、私達が焙煎したものをすぐその場で作業してくれるので、お店に商品が並ぶまでの間はすごく短いと思います。できるだけ早く袋詰めして、できるだけフレッシュなものを店頭に並べるということを大切にしています。
私たちは基本的にローストとクオリティコントロールで、カッピングを毎日やるのとデータを振り返ってみたり、次のローストを考えたりというのが仕事なのですが、プロダクションチームは他にもメンバーがいまして、袋詰め作業をしてくれるスタッフや、ローストのアシストのスタッフがいます。

基本的には焙煎の次の日からの店頭に並びますが、販売の流れが良ければ清澄店では焙煎当日から並べて、48時間以内まで店頭販売という感じです。

ブルーボトルのローストから販売までのルーティンは、私にとってもはじめはとても新鮮で驚きました。なぜならこれまではローストした豆をバケツの中にキープして、1日置いてから袋詰めするのが普通だったからです。

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GC: 本国アメリカと日本とで、焙煎の方法や、コーヒーの抽出するレシピに違いはありますか?

Y: ブレンドの味というのはそれぞれ決まっているので、例えば日本でも出しているジャイアントステップスやスリーアフリカンズ、ブレンドに入っているそれぞれの豆に対する味のターゲットというのは決まっているので、それに向けてLAでも東京でもそれぞれ焙煎を行っています。
ターゲットは同じですが、焙煎に関しては焙煎機が違うこともあり、例えばお料理のように何分間、何度で焼けばいいという感じではなく、焙煎機に合わせて少し異なる部分はあります。

すべてのロースターが同じ豆を使用している訳ではないので、同じものもあれば日本向けに違うものがくることもあります。そのためローストのアプローチは異なることもあります。

 

GC: 最後に、実際に豆を購入されたお客様が、ご家庭でおいしく抽出するために気をつけるべきコツがあれば教えてください。

Y: 販売は豆の状態のもののみになるので、ぜひグラインダーを持っていただき、淹れる直前に豆を挽いていただけたらと思っています。

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Interview with
Kevin Thaxton & Yuki Muneshima

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